ITADAKI 〜Vo. 5~

独自の文化・伝統、そこに根付く人の想いを届けるべく誕生した『いただき燈』。
その考えと共鳴した、様々なシーンで活躍する方々のインタビューをお届けする連載企画『ITADAKI』。

第五弾では、生あまざけの原料となる“お米”を育ててくださっている、
竹田かたつむり農園 代表・竹田竜太さまを迎え、雲仙の土地と、お米への想いをお届けします。

【竹田 竜太】@takeda_katatsumuri_farm
長崎県雲仙市にて、在来種・固定種の作物を育てる「竹田かたつむり農園」代表。
温暖な気候、火山灰土、海と山のミネラル豊富な水に恵まれた雲仙の地で、農薬や化学肥料を使わず、お米や伝統野菜の栽培、自家採種に取り組んでいる。
「種は、その土地の風土、人、微生物を記憶し、次の命へとつながっていく」。
自然の営みに寄り添いながら、“生き物たちの命を輝かせる農業”を目指して、日々畑と向き合っている。

<雲仙市の魅力>
僕の農園がある雲仙市は、農業がとても盛んな地域で、多種多様な農産物が作られています。
雲仙普賢岳の麓にあり、海と山が近く、年間を通して温暖で雪が積もらない土地です。
砂質の火山灰土や粘土質の黄色土など、地質の異なる土壌が混在しているのも特徴ですね。

<農業を通じて実現したいこと>
地域の伝統野菜を育て、祖先の想いや物語を未来へつなぎ、それを子どもたちの誇りにしていきたい。
命の源である「種」を採り続けることは、グローバル企業に左右されない“命の安全保障”。
伝統野菜と郷土料理は、地域の食文化を守る財産であり、観光の魅力にもなります。

自然の一部として共生する有機農業を通じて、環境を守り、次の世代へ引き継いでいく。
山・川・海、すべての命はつながっていて、人間だけが繁栄する未来はありません。

小学生の頃に見た、豊かな有明海を取り戻したい——
その想いが、今の農業の原動力です。

<お米づくり・土づくりへのこだわり>
在来種のお米を自分の田んぼで選抜・採種し、農薬や肥料を使わない自然栽培を続けています。
田んぼに還すのは前年の藁と籾殻のみ。
田植えは密にせず、株間を広く取ることで、収量よりも品質を大切にしています。
耕運や中干しも最小限にし、糸ミミズなどの生きものが増えることで、土が自然に豊かになっていくと感じています。

<環境への配慮と持続可能性>
ジャンボタニシの駆除剤は使用していません。
田んぼの水は川から海へ、そして魚介類を通して人の体へとつながっています。
だからこそ、農薬に頼らず生物多様性を守り、自然のバランスを崩さない農業を選んでいます。

田んぼは、未来に何を残すかが問われる場所。
今どう向き合うかを大切にしています。

<農業を通じて描くこれからの夢・挑戦>
~畑から、暮らしと人がつながる未来へ~
畑を中心とした自給自足的な暮らしをしながら、一年を通して野菜を育て、
種や野菜をきっかけに多くの人とつながることが、農業を始めた頃からの夢です。

これからは、畑を眺めながら食事ができる小屋をつくり、 農業や収穫を体験し、
採れた野菜をその場で調理し、味わえる場所に挑戦していきたいと考えています。

<農業を続ける中での気づきと、変わらない想い>
自然に無駄なものはなく、かつて邪魔だと思っていた雑草にも役割がある。
土の中では根が微生物を介してつながり、共存・共生していることを、農業を通して知りました。

短期的な効率ではなく、長い時間軸で考えるようになり、暮らしはより豊かになっています。
衣・食・住をできる限り手作りし、命を循環させることの大切さにも気づきました。
古民家の改築や薪ボイラーの風呂、生ごみコンポストも、その一部です。

子どもたちのために、種を残し、広げていく想いは今も変わりません。
自然のリズムで働き、暮らすようになってから失敗は減り、命の源である種を持つことで、不安や精神的な疲労も少なくなりました。 人間もまた、「何を残せるのか」を考えながら生きる存在だと思っています。

<日々の暮らしで心がけていること>
自分にノルマを課して追い込まないこと。そして、他人にも同じことを求めないこと。
日曜日は完全に休み、毎朝自強術体操をしています。

食事は旬のものを中心に、添加物や保存料の入っていないものを選びます。
間食はせず、発酵食品は手作りして積極的に。 暴飲暴食をせず、日々の積み重ねを大切にしています。

<お米づくりへの想い>
水位管理を徹底し、ジャンボタニシから幼い苗を守っています。
田んぼの水の入り口には真菰を植え、水が浄化されるようにしています。
稲刈りのタイミングも大切にしています。
こうした積み重ねで、誰が食べても安全で、美味しく、飽きのこないお米を育てています。

日本で最も多く作られている作物だからこそ、この栽培が変われば、日本は変わると思っています。
健康を維持するためにも、パンではなく「お米」を食べてほしいですね。

<豊かな未来とは>
命があってこそ人間は生きられます。

だからこそ、命を維持するために必要な「食べもの」は、最も重要視され、価値あるものでなければならないと思っています。
しかし日本では、農家の数は人口の1%にまで減ってしまいました。
作物がなくなれば、輸入に頼れる時代は長く続くとは思いません。

安全保障は武器ではなく、食べもの。 そして、食べものの“種”から始まります。
日本の作物の種の約90%は輸入に頼っています。

子どもたちのために、何を残しますか?

竹田 竜太